PROJECT STORY
自分が死んだ時のことを、考えた経験はありますか?
僕はあります。むしろ、カジュアルな感覚で考えるようにしています。
きっかけは、ふたつの出来事でした。
ひとつは、青森・恐山のイタコがある女優さんの霊を呼ぶという番組でのこと。
孤独死した女優さんに対して何もできなかったと悔いていた弟さんが、
イタコの言葉でお姉さんの気持ちを知るという一幕でした。
「安心した」「誤解してた」と弟さんは涙ながらにお姉さんの言葉を受け止めました。
本当に、女優さんの霊がそこにいたのか、正直、僕にはわかりません。
でも、目の前に救われた人がいる。きっと、この人は明日から前向きに生きる。
それは自分にとって、まぎれもないリアルでした。
もうひとつは、自分の母親が年に一度、誕生日が来るたびに、
「もし、私が病気になっても延命治療しないでね。」と言っていたこと。
子どもの自分に、ずいぶんとはっきり死生観を伝えるんだな、と思ったけど、
おかげで、僕も弟も父も、いざと言うときに迷わず判断できる。
きっと後悔もしない。それもこれも、母親がメッセージを伝えてくれたからです。
でも、ふと思ったんです。もしも、僕が死を迎える時、
後悔せずに旅立てるだろうか。大切な人を悔いさせはしないだろうか。
その時を想像した瞬間、心の中を光で照らされる感覚に襲われました。
自分にとって大切なひとは誰か、大切なことは何か。
それまで悩んだり迷ったりしていたあれこれがどうでもよくなって、
自分の人生の道しるべを手に入れた気分になりました。
重く考えずに想像してみると、本当にたくさんのヒントを与えてくれます。
最後を迎えた時、自分が心から納得するために、今をどう生きたらいいか。
大切なひとに悲しみや苦しみを残さないために、何をどう伝えたらいいか。
みんな、生きることに一生懸命で自分が死んだ時のことを考えません。
だからこそ、人生観がパッと変わる感覚を広めたい、と素直に思いました。
イタコトは、ひとりの人間がこの世に「いたこと」のかけがえなさを通じて、
本人と大切なひと、それぞれが幸せになってほしいと願って生まれた会社です。
ひとりでも多くのひとが心のこりから解放されて、前向きに生きていける、
そんな世の中に一歩でも近づけたら、とてもうれしく思います。
田村淳